1964年(昭和39年)に文部省より通達された「学寮における経費の負担区分について」(所謂「2.18通達」)と、同年同省より示された「○○大学学寮管理運営規則(参考案)」(所謂「〇管規」)を掲載します。
「2.18通達」はその冒頭に示されているように、1962年に示された学徒厚生審議会答申「大学における学寮の管理運営の改善とその整備目標について」に基づいており、水光熱費等は寮生が全面負担することが示されています。該答申は掲載しませんが、必要であれば下記資料を参照してください。
「〇管規」(マル管規)は表題の通り「参考案」に過ぎず、これ自体に効力はありません。しかし学寮を大学当局の管理運営責任者の枠組みの中に置こうとするこの「参考案」は、全国の寮生にこれに則した学寮管理規定が策定されるという懸念を抱かせ、さらには全国的な学寮と大学当局との対立を生み、60年代末の大学闘争の火種ともなっています。
参考資料
- 広島大学大学教育研究センター「大学研究ノート 通巻18号」1975年2月、http://rihejoho.hiroshima-u.ac.jp/pdf/note/49281.pdf
転載に当たっては、一部送り仮名や漢数字を修正しました。
「○○大学学寮管理運営規則」の第3条の表については、表中の長文を注釈様に記述し、また文意が通らぬ句を削除しました。
学寮における経費の負担区分について
(文大生162号)(昭和39年2月18日)
このことについては、さきに、昭和37年7月25日付学徒厚生審議会答申「大学における学寮の管理運営の改善とその整備目標について」において原則的な考え方が示されましたが、これに基づき、下記のとおり、学寮の管理運営に要する経費の負担区分の基準を設定いたしましたので、すみやかに、これにより処置され、予算の適正な執行を図られるようお願いします。
記
学寮の管理運営に要する負担区分
1 学寮の管理運営に要する負担区分の原則は、次のとおりとする。
(1) 学寮が負担するのが適当と考えられる経費
イ 学寮の施設・設備を新営し、補修するための経費
ロ 学寮の管理運営のため学校が配置する職員の人件費および学校として学寮に対する管理運営の責任を果たすために必要な業務を処理するための経費
(2) 寮生が負担するのが適当と考えられる経費
イ 私生活のために使用する電気・ガス・水道・燃料・暖房の料金などの経費
ロ 食費の原価を構成する直接経費
ハ 施設・設備の使用料(いわゆる寄宿料)
2 前項の経費負担区分の原則のうち、(1)のロおよび(2)のイ・ロについての適用を示せば、次のとおりである。
(1) 学校が負担すべきもの
イ 人件費
(A) 施設の管理上、学校が必要と認めて、事務員・寮母・掃除人・火夫等を配置する場合には、それらのものの給与
(B) 保険衛生・栄養管理上、学校が必要と認めて保健婦・栄養士等を配置する場合にはそれらのものの給与
ロ 電気料
(A) 居住以外の施設において使用される電気(寮生の炊事用の電気その他寮生の私生活のために使用される電気を除く)の料金
(B) 寮生の利用の有無にかかわらず必要な基本的費用
ハ 水道料
寮生の利用の有無にかかわらず必要な基本的経費
ニ 燃料料
(A) 居室・浴室・厨房以外の施設において使用される燃料費
(B) 寮生の使用有無にかかわらず必要な基本的経費
ホ 消耗品費
(A) 居室以外の施設の清掃のために必要な掃除用品の購入のための費用
(B) 学校の管理上必要な事務用文具類の購入のための費用
(C) 寮生のために備える救急医薬品のための費用
へ 通信運搬費
(A) 学寮の管理上必要な電話の費用
(B) 学寮の管理上必要な郵便の費用
ト 雑役務費
保険衛生上必要な清掃汲取などの費用
(2) 寮生が負担すべきもの
イ 人件費
寮生の炊事のための炊事人の手間代(ただし、学寮の給食形態のいかんを問わず、炊事人は、学生・生徒の個人的使用人として扱うことは適当でなく、学校の営造物管理に属するものであることの趣旨を徹底すること。)
ロ 電気料
(A) 居室で使用される電気その他寮生の生活のために使用される電気の料金
(B) 寮生の炊事のために使用される電気の料金
ハ 水道料
(A) 洗面所・洗たく場・浴室において使用される水道の料金
(B) 寮生の炊事のために使用される水道の料金
ニ 燃料費
(A) 居室の暖房のために使用される燃料費
(B) 寮生の入浴および炊事のために使用される燃料費
ホ 食事材料費
寮生の食事を調整するために必要な材料費等
へ 消耗品費
寮生の私生活のために必要な食器類、居室の掃除用品その他の消耗品の費用
文部省「○○大学学寮管理運営規則(参考案)」
(昭和39年8月)
(趣旨)
第1条 この規則は、○○大学における学寮の管理運営について必要な事項を定め、その円滑かつ適正な運用を図ることを目的とする。
(目的・性格)
第2条 学寮は、学生の勉学に適する環境において自主的に規律された共同生活を体験させ、これを通じて人間形成に資する課外教育施設とする。
(学寮の管理運営の責任者等)
第3条 学寮の管理運営責任者、収容対象および収容定員は、次の表に定める通りとする。
学寮名称 | 管理運営責任者 | 収容対象 | 収容定員 |
○○ | 学生部長 | 一般教養課程の男子学生 | 〇〇名 |
○○ | 学生部長 | 女子学生 | 〇〇名 |
○○ | ※ | 学部の専門教育課程の男子学生 | 〇〇名 |
※地理的に離れた学部等の学寮にあっては、「学部長又は分校主事等」とすることもありうる。
(学寮委員会)
第4条 本学の学寮の管理運営に関し具体的な方策を審議し、その円滑な運用を図るため、学長の諮問機関として、学寮委員会をおく。
2 学寮委員会は、次の各号にかかげる委員をもって組織し、学生部長が議長となるものとする。
(1) 学生部長及び学生部次長(厚生課長)
(2) (管理運営責任者となっている学部長・教養部長・分校主事等)
(3) 各学部(及教養部)の教授各1名
(4) 事務局長・庶務部長(庶務課長)・経理部長(会計課長)及び施設部長(施設課長)
(5) (所管の学寮を有している学部等の事務長)
(6) その他学長が必要と認める教職員
3 学寮委員会に関する事務は、学生部厚生課において処理する。
(入寮願)
第5条 学寮に入寮することを希望する学生は、入寮願(様式1)に、保証人の保障書(様式2)その他大学が指定する書類を添えて、管理運営責任者に願い出るものとする。
(入寮選考)
第6条 入寮を許可すべき者の選考は、学寮委員会の定めた方針に基づき、管理運営責任者が行なう。
2 管理運営責任者は、前期の選考を行なうにあたり、事前に学生の希望意見を徴することができる。
(入寮の許可)
第7条 入寮の許可は、前条の選考の結果に基づいて、管理運営責任者(管理運営責任者が学生部長でない学寮にあっては、学生部長の助言を得て、管理運営責任者)が行なう。
(入寮手続)
第8条 入寮の許可を受けた者は、指定された期限内に、管理運営責任者に誓約書(様式3)を提出して入寮しなければならない。
2 入寮の許可を受けた者が、所定の期間内に、前項の手続を完了しないとき、又は入寮の選考にあたり虚偽の申し立てをしたことが判明したときは管理運営責任者は、すみやかに当該入寮の許可を取り消すものとする。
(寄宿料)
第9条 寮生は、寄宿料月額金300円(○○寮にあっては、月額100円)を毎月所定の日までに収入官吏に納付しなければならない。
2 入退寮の日が月の中途である場合にあっても、寄宿料は1ヶ月分納付しなければならない。
3 休業期間中に係る寄宿料は、第1項の規定にもかかわらず、当該期間の開始する月の前月の納入日までに納付するものとする。
4 既納の寄宿料は還付しない。
(光熱水費等の経費の負担)
第10条 食費その他生活に必要な光熱水費等の経費は、寮生の負担とする。
2 寮生は、前項の光熱水料等の経費ついて大学の定める額を毎月所定の日までに、管理運営責任者の指定する者に納めなければならない。
(施設保全の義務)
第11条 寮生は、居室・共用施設その他学寮の施設を常に正常な状態において保全することに意を用い、次の各号の定めるところに誠実に従わなければならない。
(1) 居室を、居室以外の目的に使用しないこと
(2) 居室には、部外者を宿泊させないこと
(3) 居室に、管理運営責任者の許可なくして工作を加えないこと
(4) 共用の施設は、常に良好な状態を保つよう、連帯して保全すること
(5) 学寮施設に、管理運営責任者の許可なく、掲示・貼紙等をしないこと
(6) 故意又は過失により施設・設備を減失、毀損又は汚染したときは、その現状回復に必要な経費を弁償すること
(7) 防火管理・保健衛生・災害防止その他学寮施設の管理運営上の必要からする大学の指示に忠実に従い、積極的にこれに協力すること
(共同生活の自主的規律)
第12条 寮生は学寮設置の本旨に従い、学寮における日常生活上の具体的な問題を共同して処理し、自主的にこれを規律するため、管理運営責任者の承認を得て、自治規約を作成することができる。
2 (管理運営責任者が学生部長でない学寮にあっては、)管理運営責任者は、前項の自治規約について承認願が提出されたときは、すみやかに学生部長と協議し、適当と認めるものに承認を与えるものとする。
3 前2項に定める承認は、当該規約に基づく寮生の組織を大学の課外教育団体として認めるものであって、当該組織が学外の団体に加入しようとするときは、別途、学生部長に願い出てその承認を得なければならない。
(退寮手続)
第13条 退寮を希望する者は、事前に、管理運営責任者に退寮願(様式4)を提出して、その承認を受けなければならない。
2 前項の承認を受けた者は、退寮にあたって、居室その他居室に付属する設備等について、管理運営責任者の指定する職員の検査を受けなければならない。
(退寮処分)
第14条 寮生が、次の各号のいずれかに該当するときは、管理運営責任者(管理運営責任者が学生部長でない学寮にあっては、学生部長の助言を得て、管理運営責任者)は、すみやかに退寮を命ずるものとする。
(1) 3ヵ月以上寄宿料又は第10条に定める経費の納入を怠ったとき
(2) 風紀を乱す行為のあったとき
(3) 共同生活の秩序を著しく乱す行為のあったとき
(4) 疾病その他により保険衛生上共同生活に適しないと認められるとき
(5) (入寮許可の条件として定める)在寮期限(最短修業年限等)を超えることとなるとき
(6) 退学(除籍を含む)又は停学を命ぜられたとき
(7) その他学寮の管理運営上著しく支障をきたす行為のあったとき
(寮生以外の者の宿泊)
第15条 学寮には、寮生以外の者を宿泊させてはならない。ただし、寮生の父兄が当該寮生を訪問した際、その他やむを得ない理由により特別の願い出があったときは、学長は、管理運営責任者の申し出に基づき、使用料の徴収その他法令上の措置について検討のうえ、日を限り、寮生以外の者を学寮内の適当な部屋に宿泊させることができる。
(懇談会の開催)
第16条 学寮における日常的、具体的な問題の処理について意見を交換し、教職員及び学生の相互の理解を深めるため、管理運営責任者は、学長の承認を得て、適宜、懇談会を、開催するものとする。
(細則等の委任)
第17条 この規則の実施に関し、必要な細則及び学寮施設利用心得は、学長の承認を得て、管理運営責任者が定める。
附則
1 この規則は、昭和 年 月 日から施行する。
2 現行の○○○規則は廃止する。